日本福祉大学学長賞
「君は一人じゃないんだ!」

常滑市立南陵中学校 3年

澤田 将志

「ゲーム!」。夏空の下、南陵中野球部としての僕の最後の夏がついに終わった。知多地方中学校体育大会二回戦で敗れ、悔しさがこみ上げてくる。試合後の最後のミーティング。みんな泣いていた。僕の目からも涙があふれた。しかし、心の中はすがすがしかった。
この三年間、振り返ってみれば、全てが自分自身との戦いであった気がする。

中一の春、迷わず野球部に入った。純粋に野球が好きだからという思いで。先輩の手伝いや基礎練習ばかりであったが、楽しかった。

中二の夏、新チームになり、「主将」に選ばれた。今までに経験したことのないプレッシャーを感じた。練習試合等でミスをするたびに浴びせられる監督からの罵声や努力をしているのに結果を出せない焦り。「主将」という名の重圧に押しつぶれてしまい、野球を楽しいと思えなくなった。毎夜、悩んだ。「なぜ僕は野球をやっているのだろう。」「こんな気持ちでやり続けて意味があるのだろうか。」弱気になるのはやめようと思っても頭の中をかけめぐるのは自分が試合でミスした場面や監督から怒られた言葉ばかり。

「もう野球をやめよう。」本気でそう思った。

そして、父に相談した。父はこう言った。

「野球が自分に合わないのなら、辞めればいい。ここで辞めれば、すべてから解放されてきっと楽になる。でもな、ここで逃げたらこの先ずっと後悔すると思うよ。」

その日一日中、僕は考え続けていた。

そして、翌日。僕はグランドに戻った。前日、練習試合を休んだだけにみんなの視線がすごく気になりながら。

しかし、僕を待っていたのは仲間の温かい声、笑顔だった。「体、大丈夫か。」「将志がいないから試合に負けたんだぞ。」「今日は頼むよ。」僕は心の中で泣いていた。こんなすてきな仲間がいるのに、何を一人でくよくよ悩んでいたんだろう。そう思うと急に心が軽くなった。

そして、僕は決意した。「最後まであきらめずに、仲間を信じて野球を続けよう」と。

中二の冬。何の迷いもなかった。夢中で走り、白球を追った。また野球が楽しくなった。

そして、中三の夏。大会一回戦。試合は、〇対一でリードされたまま最終回へ。チャンスは来た。一死満塁。僕は逆転サヨナラの走者として二塁にいた。そして、打者が中前安打を放った。僕は三塁をけり、夢中で本塁へ滑り込んだ。判定は、「セーフ!」その瞬間、ベンチから歓声がわき上がり、仲間たちが喜びを爆発させながら僕のところへ駆け寄ってきた。うれしかった。どう表現していいかわからないほど心が震えた。この三年間で一つのことを学んだ。それは、人は一人だけで生きているわけではないということ。僕を温かく見守り、背中を押してくれた家族に感謝したい。そして、自分にとってかけがえのない財産を手に入れた。「友情」という最高の宝物を。みんな、ありがとう。