特別賞
「私の帰る場所」

美浜町立河和中学校 2年

山本 紋華

私の住んでいる地区は、子供が少なく、保育園も小学校も一つしかありません。さらに、保育園も小学校も各学年一クラスしかないので、保育園入園から小学校卒業までクラス替えがありません。

そんなこの場所に、高学年になった頃から不満をもちはじめました。子供が少ないのでおもしろい遊び場所も店も限られているのです。そのせいか、雑誌やテレビで見る都会の生活に強くあこがれるようになりました。学校でも、毎日毎日同じ子と、同じ事のくりかえし。新しい出会いも発見もありません。そして毎年毎年同じ行事に同じクラスのメンバー。さすがに、何年もこうではあきてきてしまいます。

だから中学校の入学式の時、私はとてもワクワクしていました。中学では、他の小学校の子も来るので五クラスになるのです。もちろんクラス替えもあります。

想像どおり、中学校での生活は最高でした。世界が広がった分、気の合う友達も増えました。行事にしても、人数が多い分すごく華やかです。部活で大会に行ったり、遊びに行ったりと、行動範囲が広がった事にも喜びを感じました。

しかしそんな中でも、一ヶ月に一度は小学生の時の友達と遊んでいます。小学生の時は嫌がっていたこの場所で、このメンバーで、遊んでいるのです。中学生になった今、そんな空間の中で私は安らぎを感じました。確かに店も少なく、不便なところもあるけれど、帰ってくると安心するこの場所は私にとって「家」であり、小さい頃から一緒で、変な遠慮もなく、信頼できるこの仲間達は「家族」でもあります。

不満をもっていたことが、今ではよいことの中で生じたぜいたくだと気付きました。今まであたりまえだと思っていたことが、大切なことだと気付くことができました。今まで不満をもっていたこの場所が、少子化の良さと悪さを教えてくれ、あたたかい気持ちにさせてくれたのです。

これから先、高校・就職と、世界を広げていくにつれて、ここに帰ってくることは少なくなっていくのかもしれません。けれども私が、この場所とこの仲間達を好きで、大切だということは、ずっとずっと変わることはないと思います。

何年たっても変わることのない、私たちの「帰る場所」。それは、私と私たち仲間の大切な宝物です。