半田市長賞
「花の輪・人の輪 200Q」

東浦町立西部中学校 3年

中林 周

「暑いなあ。いつまで草抜きするのかな。」と思いながら、学校の花壇の周りの手入れをしていると、僕の頭の上をアゲハチョウが風に乗ってふわりと飛んでいった。今にも友達の肩にとまりそうなツマグロヒョウモンも見つけた。チョウたちは花壇や鉢植えに咲いている花の蜜が大好きだ。チョウは地域の畑や雑木林、住宅の庭の草花を巡って飛んで、学校の花壇にもやってくる。僕の家もその巡回コースになっているのだろう。学校から持ってきた花鉢にもよく飛んでくるようになった。このように多くのチョウが見られるのは、この地域が緑豊かな環境で、さまざまな花がチョウを呼びよせるということだ。

緑化委員の仕事の中で草抜きや土いじりは苦手だけれど、色とりどりの花でデザインされた花壇が完成したときや、世話をしている花が大きく育ち、そこにチョウが飛んできたときはうれしくなる。夏の水やりは僕たちも一緒にホースの水浴びて気持ちいいから、きっと花や木も気持ちいいだろうと想像している。退屈に思える仕事も友達と一緒に作業していると、結構楽しいものだと感じるようになった。

昨年学校で育てた鉢植えを、学区の一人暮らしの方に届けに行った。その後、登下校中にその方に出会うと必ず声を掛けてくださるようになり、僕もあいさつを返すようになった。今年の春は民生委員さんから一人暮らしの方にパンジーの鉢植えを届けてもらうことになり、僕はそれに添えるメッセージカード書いた。数日後、パンジーを受け取った方から学校と僕に宛ててファクシミリが送られてきた。

「メッセージのしおりありがとう。種から育てたお花、愛情いっぱいのお花、大切に育てます。心うきうきです。」これを読んで、僕は初めて緑化委員の仕事をしてきて良かったと思えた。僕もうきうきした気持ちになった。学校の花壇と僕の家の庭と、そして地域に住む人のそれぞれの場所に僕たちが育てた花があって、大切にされていると思うと、普段はほとんど交わりのない人ともなにかがつながっていると感じることができた。学校で花を育て、きれいに咲いた花を届けることだけが大切なのではなく、それを通じて友達や先生、家族や地域の人たちと関わりをもって、お互いのことを少しずつでも理解しあうことがいちばん大切なことではないかと気付かされた。花はチョウを呼び寄せるのではなく、人と人との結びつきを強める役割もあったということだ。僕の見たチョウが、地域の花と緑のネットワークの中を飛ぶように、僕も自分の周りのさまざまな人たちと知り合って、心から通じ合えるようになっていきたい。これからも花を育てて、その花と一緒に僕の「どうぞよろしく。」という気持ちも届けられるようにしようと思う。