特別賞
「曾祖母から学んだこと」

半田市立乙川中学校 2年

大和 佳純

私には、九十五歳の曾祖母がいます。五年程前から認知症が進み、娘である祖母と大叔母が交代で介護しています。祖母の家に行った時にその様子を見たり、曾祖母の話し相手をしました。少しだけですが分かったことがあります。

それが私にとって認知症の人と接する初めての経験でした。まず、私が一番驚いたことは、全く私のことが分からないということです。私が生まれた時からずっと可愛がってくれていたのに、何回も名前を聞かれ、「どこから来たの。」「何年生?」と五分置きぐらいに尋ねられました。その度に、同じことを何度も何度も答えました。自分の娘である祖母のことも分からなくなるのですが、急に娘だと分かるときがあって、話が現実なのか夢の中の話をしているのか分かりません。とっくに亡くなった両親がまだ生きていると言ってみたり、小さいころの自宅の様子を詳しく話してくれたり、タイムスリップしたような気分になりました。それから、不思議だと思ったことは、食事を気にすることでした。だから祖母はバランス良く献立を考えて楽しい食事になるよう工夫しています。十時と三時のおやつも欠かさず出していてとても楽しく食べていました。食事って生きる基本なんだなと感じました。昔の人なので好き嫌いもほとんどなく、出されたものはキレイに残さず食べていて、えらいなと思いました。

このように認知症になっても、曾祖母から教えられることがたくさんあります。祖母の介助で入浴するときも、学んだことがあります。

祖母は介護する時に曾祖母を一人の女性として扱っています。「たとえ認知症であっても、恥じらう心が失われていないことが分かったの。」と祖母が言いました。曾祖母は大正三年生まれです。夏でもきちんと和服を着て他人を不快にさせるような仕草をすると、厳しく叱る人だったと聞きました。ですから、祖母の介助で入浴する時などは、タオルをかけてあげて裸を見せないように祖母が配慮しています。そうすることによって曾祖母も、安心して入浴しています。

曾祖母はこうして身をもっていろいろ教えてくれているように感じます。もちろん、ここに書いたようなおだやかな日々ばかりではありません。全く道理の通らないことを言って怒ることもあって、介護する祖母とけんかになったりもします。でもテレビや本でしか知らなかった認知症という病気が身近に起こって、それでも曾祖母は一生懸命生きているということが分かり、とても尊敬しています。介護している家族は本当に大変だということも分かりました。私もできる限り、手助けしていこうと思います。