特別賞
「師崎のおばあちゃん」

南知多町立師崎中学校 3年

星場 菜月

「おはようございまーす。」
「まあ、今日も暑いわねぇ。部活かね?いってらっしゃーい。」
「いってきまぁす。」
「おはようございます。」
「おはよう。今日も頑張ってねー。」
「はーい。ありがとうございます。」

声をかける度、師崎のおばあちゃんは、何年も使いこなしているゴミ運びや買い物、お散歩にも便利な手押し車に、ちょこっと前のめりになってもたれながら、大きくて元気な声で話しかけてくれます。

そして、私が学校から帰ると至る所で数人固まって、持ち寄って絶えず置いてある椅子に座って、何か楽しそうに話しています。「ちょっと通りにくいな。私が先に声をかけようか、それともおばあちゃん達の方が先に声をかけてくれるかな?」と思いながら近寄ります。そう思っているのも束の間、おばあちゃん達の方から打ち合わせをしていたかのように、声をそろえて
「おかえりなさい!」と大合唱で迎えてくれます。私は「そんなおばあちゃん達の元気の源は何だろう。」と思いました。いつだったか私の母と、親しいおばあちゃんが話しているのを、私もそばで聞いていた事がありました。

「師崎の私ら位の年の人は、たいがい海に関わった仕事をしとったでねー。お父さん(旦那さん)が死んで、町に出た息子に“一緒に住まんか。”と言われても、墓もあるし家もあるし、この年で新しい事を覚えたりするのも面倒だもんだいねー。それに一人は安気。師崎には、私みたいな一人暮らしがいっぱいおって、寂しきゃ椅子に座っとれば誰かが喋りに来る。それに、町の行事も声を掛け合ってみんなで揃って行くんだで、今更寂しいという事はねーがな。」私はその言葉を聞いて寂しくなりました。

なぜなら、もう六年も会っていない石川県で一人暮らしをしている祖母を思い出したからです。大病をしながら、先祖から譲り受けた物を守る為に頑張っています。「祖母は、師崎のおばあちゃん達みたいに近所の人達と元気に喋っているだろうか。人の事も気にして前向きに生活しているだろうか。」自分の祖母と比べる事で、師崎のおばあちゃん達の元気な秘けつが分かった気がします。

「師崎の全体が同じ海の恵みで生活して助け合った者同士だから、みんながみんなを知っているんだな。」と思いました。

孤独死なんてありえない町、師崎。海を誇りに働いてきたおばあちゃん達の歴史が師崎を元気にしてくれています。