半田市長賞
「たくさんの笑顔から得たもの」

半田市立半田中学校 1年

松林 瑚音

この夏、わたしは自分の将来について、新たな目標を持つことができた。それは、ある貴重な体験によって得られたものだった。

七月下旬、わたしは曽祖母が通っているデイケアサービスの夏祭りに参加した。九十才になる曽祖母は、年のせいでだんだんがん固になってきて、わがままを言うことが多い。家でも、そんな曽祖母のせいで、家族が振り回されることが度々あった。そのため、デイケアサービスの職員の方々も、曽祖母の世話でとても苦労してみえるだろう、という思いが心のどこかにあり、夏祭り当日も、何だか申し訳ないような気持ちで会場に向かった。

しかし、そんな心配は、夏祭り会場に足を踏み入れた途たんに吹き飛んだ。まず、わたしは職員の方々の明るさに圧倒された。たくさんのお年寄りに対して、満面の笑顔で話しかけている。そんな職員の方々に対して、どのお年寄りも本当に楽しそうに応え、会場は笑い声であふれていた。曽祖母も、家では見せたことのないような笑顔でじょう談を言ったり手をたたいたりして、本当に楽しそうだった。わたしは、そんな曽祖母の笑顔を見ているうちに、だんだん後悔と反省が入り混じった様な複雑な気持ちになっていった。わたしは、ここにいる職員の方々のような笑顔で、曽祖母と接することができていただろうか。同じことを何度も繰り返し言う曽祖母に、イライラしたり素っ気ない態度をとったりしていなかっただろうか。

母が一人の職員の方に声をかけた。
「いつもお世話をおかけしてすみません。それにしても大変なお仕事ですね。」
すると、その方は、
「そんなことないですよ。どんなお年寄りも笑顔で接すれば笑顔で応えてくれますし、その笑顔から、わたし達も本当にたくさんの元気やパワーをもらっていますから。」
と、おっしゃった。それを聞いた時、わたしは、これからはどんな状況でも曽祖母に笑顔で接してみよう、と心に誓った。夏祭りでは、お年寄りやその家族、職員の方々のたくさんの笑顔に接することができた。どの笑顔も本当に素敵で、わたしは (人を笑顔にすることって、何て素晴らしいんだろう。わたしも、将来こんな仕事に就けることができたら、どんなに幸せなんだろう。)という思いがこみあげてきた。

帰り道、わたしは曽祖母に
「今日のひいおばあちゃん、とっても楽しそうだったね。」
と、笑顔で声をかけた。すると、曽祖母も、
「ありがとう。今日は本当に楽しかったよ。」
と、笑顔を返してくれた。わたしは、心の中がホワンと温かくなり、体中からうれしさがわいてくるのを感じた。

わたしの将来の目標。それは、人を笑顔にする仕事に就くこと。そうわたしに決めさせてくれた、今年の夏の出来事だった。