05福田 日本福祉大学の創立以来、60年以上にわたって実践してきた教育・研究の多くがSDGsの17の目標そのものだと感じますが、児玉学長はSDGs推進のために本学が取り組むべきことをどのようにお考えですか。児玉 本学園の創立者である鈴木修学先生が、建学の精神で「困難を抱えている人たちのしあわせの実現」を掲げており、そのために行動できる人の社会への輩出が本学の使命です。つまりSDGsが掲げる「誰一人として取り残さない」と理念が合致し、これまでの取り組み自体がSDGsの考え方にフィットしている。これが前提として大きいですよね。そのうえで、たとえばゴール1「貧困をなくそう」、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」、ゴール4「質の高い教育をみんなに」は、今まさに推進している地域共生社会に向けての教育や研究内容と重なっています。福田 そうですね。学長がおっしゃったようにゴール1、ゴール3、ゴール4は本学として重視して取り組むべき目標だと思います。同時に、17のゴールは密接に関連し合う不可分性を持ちますから、広い視野を持って教育・研究の実践を進めるべきでしょう。本学は社会福祉学部をはじめ、教育・心理学部、健康科学部、経済学部、国際福祉学部、看護学部、スポーツ科学部、通信課程の福祉経営学部と8学部のさまざまな分野からアプローチできるのが特徴。学部の枠を越えて、横断的に学べる仕組みも強化しながら幅広い視野でSDGsに関われると思います。大島先生は、本学の取り組みを医療の立場でどうご覧になりますか。大島 日本福祉大学の取り組みすべてが人のしあわせにつながっているのは素敵です。SDGsが国連に採択されたのは2015年ですが、「サステイナブル・ディベロップメント」は1990年代からのグローバルな課題であり、中でも環境問題は重要なテーマでした。現在、世界規模では人口爆発が問題になっていますが、日本では人口減少、少子高齢化が問題です。それによって社会構造が一変しつつあり、私たちの暮らしを脅かす深刻な課題が山積しています。1950年には全体の7%だった高齢者人口が、今や30%を超え、医療制度、介護保険制度、年金制度などの社会保障は先行き不安です。その中で、大学への期待や大学が果たす役割は一層大きくなっていると思います。児玉 日本の人口が1億人を切ったとしても、コマのような形の人口ピラミッド構成では不安定で仕方ないですよね。将来、75歳以上、80歳以上をどう支えていくのかを社会的に考えていかなければならない。日本が世界の先陣を切って進めるべき課題です。特集 SDGs達成に向けた日本福祉大学の取り組みSDGs達成に向けて、地域に根ざし、世界を目ざす「ふくしの総合大学」である日本福祉大学はどのような教育や取り組みを行うべきか。この重大なテーマについて、国立長寿医療研究センター名誉総長であり日本福祉大学常務理事を務める大島氏、日本福祉大学の児玉学長、福田副学長の3名にお話いただきました。SDGs達成に向けた日本福祉大学の取り組みスペシャルトーク17の国際目標と、本学の理念の合致が大前提。31
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