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2021年度 日本福祉大学セミナー

第33回社会福祉セミナーin福岡を開催しました

掲載日: 2021年11月27日

 社会福祉セミナーは社会福祉にかかわる研究、研修、実践を推進することを狙いとして、大学と本学同窓会が共同で企画を検討し、大学後援会の支援も受けて1年に1回実施しています。
 33回目を迎えた今回は、「アート×ふくし ~地域共生社会の実現に向けて~」をテーマに電気ビルみらいホール(福岡市)をメイン会場とし、大学公式YouTubeでの同時配信という初のハイブリッド形式で開催となりました。会場では本学同窓生を中心に在学生や一般の方々を含め86名が参加し、WEBでは154名の方にご視聴いただきました。

第33回特設サイト

ライブ配信のアーカイブ動画が公開されましたのでご案内いたします。

<開会宣言・学長メッセージ>

 開会は、東京2020オリンピック・パラリンピック公式アートポスターアーティストの一人でもある書家の金澤 翔子 氏(本学客員准教授)による『共生』の揮毫の様子を撮影した動画からスタート。会場にも書が展示されました。
 次に、松尾 真一 実行委員長(本学福岡県地域同窓会会長)による熱意溢れる開会宣言がなされた後、児玉 善郎 学長より、コロナ禍で学生・教職員の命と健康を守ることを最優先としつつ、学びの継続を諦める学生を出さない為の対応について説明されました。合わせて、“ふくしの総合大学”が社会から求められる役割やSDGs達成に向けた取り組みや学生が主体的に行った認知症啓発プロジェクトについても報告されました。

『共生』を揮毫する金澤 翔子 氏(書家・本学客員准教授)

金澤 翔子 氏に揮毫いただいた『共生』

開会宣言をされる松尾 真一 実行委員長(写真左)と児玉 善郎 学長(写真右)

<トークショー>

 「がばいばあちゃんが教えてくれたこと」と題し、島田 洋七 氏にご登壇いただきました。コロナ禍での日常生活を通して感じた幸せや苦労について語られました。
 「がばいばあちゃんがもしご存命なら、現在の社会状況をどのように感じられると思いますか」という司会者からの問い掛けに対し、「勉強するように勧められていたのではないか」と語られました。また、自分のことを優先し、少し余裕ができてから他者に気遣いすることを心掛けることによって、思いやり溢れる社会になるのではないかとお話されました。
 がばいばあちゃんの介護をきっかけに、親族の関係性が強くなり思い出が増えたことは感謝していると語り、地域共生社会というテーマに関連し、無理をしない範囲での幸せのおすそ分けが大切と語られました。

島田 洋七 氏のトークショー

<パネルディスカッション>

 「アートから生まれる素敵な関係 福祉×地域×社会」と題し、パネリストに障害福祉サービス事業所 PICFA施設長の原田 啓之 氏(同窓生)、長崎県と中心に事業を展開しているひぐちグループ 代表取締役社長の樋口 益次郎 氏、福岡市内の広告代理店の株式会社ワイズアップ 取締役の竹下 いおり 氏、コーディネーターに野尻 紀恵 氏(本学社会福祉学部長)をお迎えし、パネルディスカッションを行いました。
 原田氏と竹下氏の出会いは2005年で、偶然、竹下氏が会社近くの壁画作品に惚れ込み、そのアーティストを探したことがきっかけでした。企業に向けて障害者作品の売り込みをしても、展示場所を借りるだけという状況が続いていましたが、竹下さんが初めて求めて下さったことが、今日までつながっています。

 樋口氏と原田氏の関係は竹下氏が取り持ちました。きっかけは創業70年続く会社のロゴマークを作るという仕事をPICFAに依頼したことでした。障害者の方の枠に囚われないデザインが見てみたいと思ったとのこと。最初にでてきた雲のデザイン800個はダメ出しされましたが、お互いが持つ雲のイメージを共有したところ、すぐ最高の作品が生まれたそうです。
 福祉は失敗しないことを前提として支援計画を立てるのが一般的です。しかし、PICFAでは失敗から学ぶということを重視しています。これは日本福祉大学で学んだことが原点になっているそうです。
 原田氏は「障害者は社会の弱者だと思われることが多い。しかし、どうすればこの立場から脱却できるのか考えた時、『地域の資産』になればよいと思った」と話します。PICFAは障害者施設ですが、地域の方の交流の場になっています。PICFAは「時代を読み、未来を見据え、そしてアート活動だけでなく、彼らの人生が広がっていくこと。」という理念を掲げて活動しています。障害者アートをきっかけに、地域を巻き込み続けたいと話されました。

 最後に竹下氏から、「たまたまアートの仕事をしているから障害者アートと出会って原田さんとつながった。障害者アート以外でも、専門家の方と出会うと化学反応が起こると思う。引き続き、すばらしいアートを様々なところに紹介をしていきたい。」と話しました。
 樋口氏は、「新しい時代とは何だろうかと常に考えている。良いことも悪いことも全てを受け入れることこそが、新しい時代を迎える私たちのやるべきことではないかと痛感した。障害者アートを通し、会社としてグループとしてやるべきことが見つかったと感じている。」と語りました。
 原田氏は、「セミナーで『アートとふくし』という言葉が使われる時代になってきたが、まだまだ障害者アートをどのように使うべきなのか試行錯誤されている。作品や完成品に光が当たり、当事者たちに目が向いていない。絵を描いていく過程・協働して仕事をする過程が美しければ、作品は当然美しくなっていくと思うので、いい絵を描こう・描かせようではなく、過程を大事にしていただきたい。当事者が自己決定できる場で、失敗を経験して学び、そして輝ける居場所を作りたい。それによって、健常者と障害者の壁やそれに付随する社会問題の解決につながるのではないか、と思っている。」と話を結びました。

【特別プロジェクトの様子】

佐賀県基山町で行った特別プロジェクト「大きな絵を描こう」では、2日間で約100名の方々が色を重ねた。この絵は、セミナー会場の舞台に展示された。

【パネルディスカッションの様子】

登壇者に質問する野尻 紀恵 氏(本学社会福祉学部長)

写真左よりパネルディスカッション中の原田 啓之 氏、樋口 益次郎 氏、竹下 いおり 氏

 最後に村井 麻木 副実行委員長より「本日の学びを活かし、日福マインドを忘れず、それぞれが自分らしく頑張りたい」と閉会の挨拶が述べられ、本セミナーは盛会の内に終了しました。
 また、次年度開催地となる石川県地域同窓会の馬渡 徳子 会長からは、「皆でプロセスを楽しみながら、いただいたバトンをつないでいきたい。面白くて温かい仲間たちと石川でお待ちしています。」と次年度開催に向けての意気込みが語られ、全ての日程が終了となりました。

閉会挨拶を述べる村井 麻木 副実行委員長(写真左) 次年度への抱負を語る馬渡 徳子 石川県地域同窓会会長と川畑 桂一 石川県地域同窓会副会長(写真右)

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