特別賞
「支えてくれた仲間がいたから」

半田市立成岩中学校 3年

石川 結月いしかわゆづき

「礼に始まり、礼に終わる」何事も礼儀が大切であり、相手への敬意を表す。という意味の込められたこの言葉は、私が小学四年生の時に初めて竹刀を握った時に覚えた剣道の訓えです。

剣道の技は、稽古を重ねて「習得」することが出来ますが、この訓えは稽古だけでは身につけることは出来ません。私は今まで試合に勝つたびに自分の努力の結果だと自信を持っていました。でも、自分の力だけでは決して「勝ち」を手にすることは出来ないということに最後の大会で気付くことが出来ました。

夏休み初めの二日間、中学生活最後の大会がありました。私はこの大会に、自己ベスト更新と県大会出場を目標に掲げて試合に挑みました。一日目の個人戦では自分で納得のいく闘いで目標を達成することが出来ました。しかし、県大会出場を賭けた二日目の団体戦では緊張と主将としてのプレッシャーで思うように体が動かず、技も決まらず、自分の力を出し切れずにいました。そして
「この試合に負けて、決勝リーグには進めないかもしれない。」
と弱気な思いが心の中に広がっていました。きっとその時の私は周りが目に入らず、たった一人で闘っている気持ちになり、一緒に闘っている心強い仲間の存在を忘れかけていたのだと思います。

「気合い入れて行こう」
と、仲間の一人がいつものように背中に喝を入れてくれて次の試合が始まりました。先鋒が鮮やかに二本先取すると次鋒は一本取られても冷静に二本取り返してくれて中堅の私につなげてくれました。そして私の番になり、今度は頑張ってくれた仲間のために
「必ず勝つ」
という強い気持ちに切り替わり二本を勝ち取りました。後に続く副将、大将も粘り強く勝ち、県大会出場を決める決勝リーグへ勝ち進むことが出来ました。

剣道は一対一の闘いです。けれど、勝ちを祈っていてくれる仲間の思いはコートの中にしっかりと届きます。そして、私たちの力を信じてくれる顧問の先生、朝早く弁当を作り送ってくれた母、忙しい仕事の合間に駆け付けてくれた父、励ましてくれる先輩、一生懸命拍手で応援を送る後輩。多くの人に支えられてこのコートに立つことが出来ている、という思いは「たった一人で」という不安な気持ちを心強さに変えてくれました。

最後の試合を終え、表彰式で三位の賞状を頂いた時、共に闘った仲間との一体感と、支えてくれた人達への感謝の気持ちでいっぱいになり涙があふれてきました。

剣道を始めて六年目にして初めて「礼に終わる」気持ちになれました。そして、何事にも礼を尽くす心を持ち続けることが、自分自身の成長につながっていくのだと感じることが出来ました。