日本福祉大学学長賞
「おじいちゃんは認知症」

大府市立大府中学校 2年

北川 綾菜きたがわあやな

私のおじいちゃんはアルツハイマー型認知症です。

中二の春、中学生になりおじいちゃんと会う回数も減り、
「今日こそは会おう。」
そう思って学校から帰ると
「おじいちゃん、認知症になったって。」
と、告げられました。

私はおじいちゃんっ子だったので、それを聞いたときは嘘であってほしいと思いました。 でも、日に日にやれないことが増えていくのを見ると現実を突きつけられ、とてもつらかったです。

ちゃんと向きあわなければいけないことで目をそらしてはいけないのだと確信し、私はなるべく接する回数を増やしたり、立つ座るの動作を手伝ったりして、私を覚えている間にやれることをしようと思いました。

そうしていると、家族でいる時でも一番最初に私を見て笑ってくれてすごくうれしくなるのと同時に、いつか笑いかけてもくれなくなるのかなという怖さが入り混じり悲しくなってしまいます。

つい最近、おじいちゃんがいきなり自転車を持ち出して
「散歩に行ってくる。」
と一人で乗ろうとした出来事がありました。正直、自転車に乗れるような身体ではありませんし、道も恐らく分からなくなっていると思います。でも私は、家族がおじいちゃんを必死に止めているのを見て、なんだか悲しくなりました。そして私は母に
「自転車は引いて歩くから、私も一緒に散歩に行きたい。」
と言いました。おじいちゃんは、また笑顔になりました。車道側を私が歩き、ゆっくりとしたペースで、そしておじいちゃんの話を聞きながら、安全に十分に配慮し、私は一緒に散歩に行きました。楽しそうに笑うおじいちゃん。帰ってきたら「ありがとう」とおじいちゃんは満足気に自転車をしまっていました。

自宅へ帰ると母にもお礼を言われました。そして、かつて母も認知症の祖母を持つ、私と同じ立場であったことを話してくれました。母はこんなことを言ってくれました。
「認知症の方は、否定が一番つらいんだよ。」
それを聞いて、全てに肯定することは難しいけれど、私はできるだけおじいちゃんの要望を叶えてあげたいと思いました。やっぱり、私はおじいちゃんの笑顔が大好きだからです。

ゆっくり二人で自転車を引きながら歩いた散歩道。上り坂で少し浅くなる呼吸。二人のタイヤの回転する音。もしもおじいちゃんが忘れてしまっても、何度でも私は教えてあげたいと思います。二人で笑いあったこと、私がちゃんと覚えているから。