特別賞
「職場体験の先に見えたもの」

半田市立青山中学校 2年

榎本 亜香えのもと あこ

「あなたのなりたい職業は何ですか。」そんなアンケート用紙の問いに、私の筆は止まる。周りを見渡すと、みんな黙々と答えを書いていた。

二年生に進級してから、将来のことやなりたい職業について、授業で考えることが多くなった。今の私には、これといった夢がない。なりたい職業や、こんな大人になりたいという具体的な理想さえも漠然としていて、心配になるくらいだ。だから、こうなりたいと夢をしっかり持っている人が羨ましかった。特にここ最近ではそんな人が多くて、焦りを感じはじめていた。

そんな中、授業では夏休み中の職場体験に向けての活動が始まった。職場体験とは夏休み中に、それぞれが決めた事業所に向かい、仕事を実際に体験し「働くこと」について学ぶものだ。何関係の仕事を体験したいかは、自分で選ぶことができる。そこで私は、金融関係の郵便局を選んだ。理由は小さい頃、葉書を買いに行ったときに、店員さんが優しく接してくれて嬉しかったからだ。私もあのときの人のように、人を笑顔にしたいと思ったことも理由の一つである。実際に接客をすることに不安を感じつつも、体験当日がとても楽しみだった。

そして体験の日がやってきた。働く時間は九時から十五時までの六時間。従業員の方と挨拶を済ませてから、仕事の説明を受けた。仕事内容は、葉書や切手の販売、封筒や荷物の受け取り・仕分け、さらにはお金や切手等の確認や補充など、多岐に及ぶ。実際に体験をして感じたことは、働くことは「楽しい」ということだ。荷物を受け取ったとき、お客さんが「ありがとう」と言って帰っていった。その言葉を聞いて、私は心から嬉しくなった。仕事をするのは大変だったが、そう言われると達成感や喜びの方が大きくなった。そうなると次も頑張ろうと思える。これは働くことでしか得られない、貴重なものだと思った。長いはずの一日は、あっという間に過ぎてしまった。

こうして、充実した三日間は過ぎていった。この三日間で、私は大切なことをたくさん学んだ。仕事に対する姿勢や働くことで得られるもの、言葉使いや挨拶、そして将来。従業員の方々の仕事に対しての向き合い方に私は感激した。それは一切妥協のないもので、とても眩しかった。私も将来、こんな大人になりたい、そう思えた。未来の自分に一歩近づけたような気がした。

まだ夢は見つかっていない。しかし、それでもいいと思った。こんな大人になりたいという確かなものを掴めたから。また時間をかけて、ゆっくり探してみたい。そしていつか「私の夢は○○です。」と胸を張って言えるようになりたい。