特別賞
「自分の仕事と思いやり」

東海市立上野中学校 1年

貝本 一華かいもと いちか

 私は中学生になって今までは勉強も特に困らず、他の小学校から来た子と友達になることができ、とてもいい中学校生活だなぁと思っていました。その友達と初めて話したのは学校が始まってから一週間ほど経ったころでした。そろそろ友達をつくらないと、とあせりはじめ、勇気をだして話しかけると気があって仲良くなれそうだなと思いました。その友達さきさんはとても明るくて優しいので私も話しかけやすくすぐに友達になれました。

 ある日のそうじの後の時でした。クラスのみんなはもう自分の帰りの支度をしていて、私も帰りの準備をしようと思いロッカーへ行くと、ロッカーの下でなにかをしている人がいました。だれだろうと思いながら見るとさきさんでした。手を見るとちりとりを持っていて一生懸命ゴミを集めていました。他の教室のそうじの人はもうとっくに帰りの支度をしているのにと思っているとさきさんは、「だれもやってくれないから毎日さきがやってるの。」と少し笑いながら言いました。私の中の時間がピタッと止まった気がしました。そして、その中にいろんな気持ちが入ってきました。なんでこんなに優しいんだろう。毎日やっていたのに、なんで一度も気づいてあげられなかったんだろう。そんなことを考えているうちにさきさんは立ち上がり、集めたゴミを捨てにいきました。その後も、そのゴミ箱のゴミを外に持っていって捨てたり、黒板を消したりと、もちろん自分の仕事ではないのに当たり前のような顔をしてやっているのを、私は後ろからぼーっと見ていました。このような事全部を毎日さきさんがやっているという訳ではないかもしれませんが、さきさんのようにこのクラスを陰で支えている人がいることに気づかされました。

 私は、今まで学校でも家でも自分の事しか考えず、裏側でだれかが支えてくれていることも知らずに、表側だけを見てきました。「思いやり」といえば、だれかに「ありがとう」といわれることをすることだけだと思っていました。でもさきさんは、だれからもお礼を言われなくても気づいてもらえなくても、ずっといろんな人に「思いやり」をしていました。私もこんな「思いやり」ができる人になりたいと思うようになりました。

 このたったの10分程の出来事で私の心はゆれ動かされ、いろいろな事に気づかせてくれました。前だったら気にしなくて見えていなかったことも、今ははっきりと見えるようになりました。 「これは自分の仕事ではない、だからやらなくていい。」ではなくて、「これをやったらだれかが助かる、楽になる、だからやろう。」と考えていきたいです。