半田市長賞
「たとえ誰かが見ていなくても」

阿久比町立英比小学校 6年

伊藤 由奈いとう ゆな

 私の家の前には、地区のゴミ集積所があります。夏は、生ゴミのにおいが風に乗ってやってくるので臭いですが、母は、
「家を出たらすぐに、ゴミが捨てられるから 便利だわ。」
と言っています。

 夏休みのある日の夕方、私は居間から窓の外をぼーっと見ていました。その時、ゴミ集積所に人かげが見えました。「あの人、何をしているんだろう」よく見ると、私の祖父でした。集積所の周りの草をせっせと刈っていたのです。「なんでじいちゃん、うちの土地じゃない所の草刈りしているんだろう。誰か阿久比町の係の人がやるんじゃないのかな」 そう思った私は、母にも聞いてみました。
「あのゴミ集積所は、地区の人が管理しているから、気付いた人がやっていいんだよ。カラスに生ゴミをぐちゃぐちゃにされて中身が道路に飛び出していたのを、ママもチリトリを持ってそうじしたよ。私だけじゃなくて、お隣のおじさんやおばさんも、やってくれていたよ。」
その日から、何となくゴミ集積所を気にしながら生活をしてみました。

 私たちの地区は、毎週火曜日と金曜日が燃えるゴミの日です。大多数の人たちは、きちんとルールを守って、その日の朝にゴミ出しをしています。しかし、たまに前日からゴミを出す人もいて、それをねらって猫やカラスがゴミを荒らしたりすることもあります。また、月に二回、月曜日に資源回収があります。私も、家の手伝いで、何回か出しに行ったことがあります。アルミ・スチール・雑びん・ペットボトル・ダンボール・雑誌・新聞などきちんと分別して出します。驚いたこともありました。前日の夕方にたくさんあった新聞紙が、朝になると一つもないことがありました。これは、夜に誰かが車で来て、持っていってしまうのだそうです。古新聞はお金になるからです。

 世の中には、本当に色々な人がいます。祖父や母、お隣の人たちのように、誰に何を言われたわけでもないのに、自分から地域のゴミ集積所をきれいにしようとする人達がいます。その反面、カラスや猫に荒らされる危険がありながらも、前日にゴミ出しをしたり、地域のお金になるはずの新聞を持っていってしまうような人もいます。自分さえよければいい、という考えが心の中で勝ってしまっているのだろうと思います。私もたまにズルをして楽をしたいな、と思うこともあります。 しかし、それをすると、自分以外の人が嫌な思いをしてしまうかもしれません。

 祖父は草刈りをしてきれいになった集積所を見渡し、何事もなかったかのように家へと戻っていきました。「じいちゃん、かっこいいな、私も誰かが見ていなくても、サラッと人のために行動できる大人になりたいな」と思います。じいちゃん、良いお手本を見せてくれてありがとう。