特別賞
「その日に備える~祖父の話を聞いて~」

半田市立成岩中学校 3年

宮原 芽生みやはら めい

 半田市に住む祖父母の家には古びた焦げ茶色の丸いテーブルがあります。なぜこんな古いテーブルがあるのかと聞くと、祖父は伊勢湾台風の時の話をしてくれました。

 祖父が中学校一年生だった時、前例を見ない規模と強さの伊勢湾台風が来ました。祖父の家は平屋で土地が低いところにあったので、すぐに浸水してしまい、避難が遅れてしまいました。幸い、隣の家の二階に避難させてもらえたそうですが、避難させてもらえなかったらどうなっていたんだろうと思うと私は怖くなりました。しかし、祖父は後になって大変なことに気が付きます。犬をロープに繋いだまま、家から避難してきてしまったのです。平屋は浸水してしまっているので、犬は溺れ死んでしまったかもしれません。翌朝、急いで犬を見に行くと
「チビ!」
水の上に浮かんだテーブルの上にチビが立っていたそうです。その時のテーブルがこれなんだと教えてくれました。

 私は祖父の話を聞いて、祖父やチビが助かった事にほっとすると同時に、自然災害の恐ろしさを感じました。伊勢湾台風について調べてみると、半田市では二百九十人の死者や行方不明者が出たそうです。祖父が通っていた中学校でもクラスメイトが一人亡くなり、小中学校合わせて、市内で六十人もの児童生徒がなくなったと聞きました。もともと伊勢湾台風を聞いたことはありましたが、これほどの被害があったとは知りませんでした。

 近年、気候変動などで災害が増えてきたと感じます。最近では、熱海の土砂崩れがありました。去年も多くの台風が押し寄せ、地震も多発し、多くの人が被害にあっています。日本は災害大国です。いつ何が起こるかわかりません。近頃は私の住む中部地方では災害による被害がでていませんが、南海トラフ地震などいつ災害が起きてもおかしくない状況だと言われています。しっかりと事前に準備することの大切さを度々授業の中でも学んできました。非常持ち出し袋を用意したり、避難連絡と避難場所を確認したりするなど事前にできることはたくさんあります。私は特に、地域の人との交流を深めることが大切だと思います。災害があった時は、共に助け合うことが大切だからです。地域の人と助け合うことを「共助」といいます。「共助」は一人での避難が困難な人を手助けしたり、がれきの下から出られなくなった人を助けるなどのことです。阪神・淡路大震災の人命救助の約六割は「共助」によるものだったとも言われています。「共助」をすることによって多くの人の命を救うことができるのです。

 私は「共助」ができる地域になるには、まずあいさつが必要だと思います。日々の小さなコミュニケーションが交流を深める鍵になると思うからです。これからは、私もより積極的にあいさつをして、地域の方との交流を深め、良い地域関係を築いていきたいです。