日本福祉大学生涯学習センター長賞
「声に出して伝えたいこと」

知多市立知多中学校3年

浅井 栄真あさい えいしん

 僕は体育祭の競技中、勢いよく地面に転倒して立てなくなった。友達が肩を貸してくれて保健室に行き、すぐに病院でレントゲンを撮った。足首の骨が折れていた。

 何度も通う病院の待合室、僕は本を読むのも飽きて周りの人たちを、視線が合わないように観察していた。

 小さい子ども連れのお母さん、作業着を着ているおじさん、付き添いの人と歩いているご老人。僕の目に止まったのは三十歳代の女性の看護師さんだった。胸のポケットに携帯電話とカラフルなペンを挟み、腰にはアルコールのスプレーをぶら下げ、ひっきりなしに来る患者さんの受付や電話対応をしていた。時には怒鳴り散らしている患者さんにも丁寧に対応していた。

 コロナ禍で消毒や検温などといった仕事が増えて忙しい中、笑顔を絶やさず、すごいなあと思うと同時に、コロナ禍で自分の身も危険にさらされるのに、どうして献身的に働けるのだろうかと疑問に思った。

 僕がもし看護師さんだったら……。コロナウイルスに罹っているかもしれない患者さんのギプスを外し、垢だらけの足を笑顔で優しく温かいタオルで拭いてあげることが出来ただろうか。  僕は近所の看護師さんに、コロナ禍でなぜ自分を犠牲にしてまで働けるのかを聞いてみた。

 「犠牲とは思っていないんだよ。目の前に不調を訴える人がいたら、やれることをやりたいから。」

 即答だった。僕はハッとした。僕は自分のことばかりを考えていた。すごく恥ずかしくなって耳が熱くなった。そして笑顔で、

 「患者さんにありがとうと言ってもらえると、すごく嬉しいんだよ。」
と教えてくれた。

 二年前、謎のウイルスが海を渡ってやって来た。ずっと僕は自分を守るだけで精一杯だった。

 今回、骨を折って気付いたこと。それは、他人を思いやり、温かい手を差し伸べる事の出来る、心が豊かな人たちに、僕たちは支えられ助けられ生きているということ。それに気付いた時、声に出して伝えたくなった。

 僕たちに出来ること、それは助けてくれた人に心から感謝の気持ちを伝えること。  最後に、僕と温かい手で繋がってくれている多くの方々に感謝の気持ちを伝えたい。

 「本当にありがとう!」

 そして、いつか僕も支えることの出来る大人になるからね。