半田市教育委員会賞
「私の道しるべ」

半田市立成岩中学校1年

藤崎 明瑠ふじさき あかる

 私には兄がいます。すでに家を出て自分の進むべき道へ進んでいます。年が離れているせいか、私は一人っ子のような感覚で、マイペースなところがあります。好き嫌いがはっきりしていて、興味があることにはすぐに夢中になりますが、飽きることも多く、好きな音楽、有名人、習い事、将来の夢などもコロコロ変わりました。楽しいことは大好きですが、勉強や運動に全く興味がなく、なぜ嫌なことや辛いことをしなければならないのだろうと考えていました。中学生になると勉強も難しくなり、部活動も始まります。入部先もなかなか決めることができず、勉強と部活動を両立していくことができるのか、不安で仕方ありませんでした。そんな時、私は何気なく兄が使っていた部屋に入りました。そこは見慣れた空間でしたが今までとはどこか違って見えました。一番最初に目に飛び込んできたのは壁に貼られた「日々挑戦」「成長」の筆文字。中でも一際目立つのは大きく力強く書かれた「成中魂」でした。兄は幼い頃、ぜん息気味で激しい運動ができませんでしたが中学では水泳部に入部し、熱心な先生の指導の下、水泳にのめり込んでいきました。兄にプールで遊んでもらった楽しい思い出がよみがえります。兄の部屋には部活動での自分の目標や練習メニューが細かく書かれたノートや仲間と楽しげに笑う写真が大事に残されていました。部活動に対する熱い思いと一生懸命努力する兄の姿が目に浮かんできました。「成中魂」という文字には兄の水泳部に対する愛情と決意を感じました。部活動に限らず勉強や生徒会、学校行事のどの場面においても全力でぶつかっている兄の姿勢が感じられるものばかりでした。私は兄に「中学は楽しいぞ。頑張れ。」と背中を押してもらえた気がしました。今まで嫌なことや辛いことをさけていた私。失敗することが怖くて、挑戦しなかった私。たくさんのことをあきらめて後悔した私。兄の卒業文集には自分をふるい立たさせてくれた先生方への感謝の気持ち、一緒に笑い、はげまし合い、支えてくれた多くの友人達への感謝の気持ちが書かれていました。母は卒業式を終えた兄に

「中学校生活はどうだった。」

と聞いたそうです。兄は清々しい顔で、

「中学生活に一点の悔いもない。」

と言ったそうです。私の心は晴れていきました。挑戦した後の後悔は次に生かすことができますが、挑戦しなかった後悔は一生悔いが残ると思いました。離れて暮らす兄は、私の心を動かすほどの大切な道しるべを残してくれていました。中学生活では努力の先にあるたくさんの宝物をみつけて、「一点の悔いもない。」と胸を張れる自分になります。