特別賞
「あたりまえの尊さ」

半田市立成岩中学校3年

吉村 美花よしむら みか

 「・・・・・・。」

 私はその瞬間、ショックと困惑で言葉が出てこなかった。コロナ関連が原因で一週間外出できなくなる、そう母に言われたのだ。夏休み前の一学期末、いろいろなことを考えた。最後の部活、郡大会、成績、習い事・・・。それらが頭の中でぐるぐると駆け巡った。

 私たちは、世の中がガラッと変わってしまったこの数年間で数えきれないほどの我慢をしてきた。卒業式、入学式、体育祭、野外活動などの行事は例年通り行うことはできず、入学しても休校、部活はなかなか始められないなど、想像していた中学校生活とは違った。それでも、徐々に世の中は立て直され、もとに戻りつつあった中、その中での一週間の外出禁止。さすがにつらかった。苦しかった。なんでこのタイミングで・・・と、どこにもぶつけようのないやるせない気持ちが私をおそった。

 しかし、次の日の朝、自分でも驚くほど頭と心がスッキリしていた。こうなったのは誰が悪い訳でもない、それならもういっそのこと楽しんでやろうという気持ちに切り替わっていた。

 授業には、タブレットを使ってリモートで参加した。初めこそ多少緊張したものの、先生の丁寧な対応に助けられ、しっかりと勉強できた。また、放課には友だちが話しかけてくれたり、授業のプリントを送ってくれたりと、友だちの優しさに触れて心があたたかくなった。それと同時に、友だちへの感謝の気持ちと、そんな友だちがいてくれることの幸せを感じた。

 そんなわけで、毎日忙しくしていると、案外あっという間に一週間が過ぎ、久しぶりに部活に行く日がやってきた。私が体育館に入ると、みんなが駆け寄ってきて、心配してくれたり、寂しかったと言ってくれたりした。私はとても嬉しくて、今まで以上に友だちを大切にしたいと思った。

 この数年間で、あたりまえがあたりまえでなくなり、思うようにいかないことが何度も重なって、くじけそうになった人もたくさんいるだろう。しかし、コロナ禍は、必ずしも悪いことのみをもたらしたわけではなかったということを今回の出来事で実感した。日常が崩れてしまったからこそ、今までの「普通」がかけがえのないものだと気づくことができた。いつもなら少し面倒くさいなと思ってしまう授業さえも頑張ってみようかなという気持ちになれた。

 この経験から私は、普段の何気ない会話や何の障壁もなく人と関われることは、とても幸福なのだと心の底から思った。あたりまえに過ごせる日々の一日一日を大切にして残りの中学校生活を送りたい。