四年前の七月十日に大切な一つの命が終わりました。私の大好きな祖父が病気で天国にいってしまいました。
祖父は私が赤ちゃんの時はよくお風呂に入れてくれたり、オセロをしたり、勉強を教えてくれたり、畑で野菜を一緒に収穫したり、おいしいものを一緒に食べたり、とてもよく可愛がってもらいました。
祖父は肺の病気を患っていて、急に呼吸が苦しくなり、二週間の入院で亡くなってしまいました。その二週間、私は母と祖母と毎日お見舞いに行きました。酸素吸入器をつけた祖父は私たちが行くと笑顔で迎えてくれましたが、急に体調が悪くなり、家族のみんなに見守られて静かに息をひきとりました。
呼吸がとまる少し前、祖父の目からひと筋の涙がすーっと流れ落ちました。みんなにさよならを言ったような気がしました。あの時の涙は私の心に深く残りました。
私は祖父の死で今でも忘れられない二人の方に出会いました。一人は納棺師の方です。納棺師というのは遺体を清め、整え、死化粧をほどこし、旅立ちの衣装を着せて棺に納める仕事です。
その時小学校五年生だった私は、人の命が終わるところをはじめて見ました。すごく悲しくてたくさん泣きました。そんな時に納棺師の方が、祖父のひげをきれいにそってくれて身体を拭いたり
「髪の毛の分け目はどちらですか?」
「体格のいいかたですがスポーツされていたんですか?」
と色々祖父の話をしたりしながら、あっという間に、生きていた時の祖父が気持ちよさそうにねむっているように変身させてくれました。
私はなんだか不思議な気持ちになったのを今でも覚えています。悲しいけれどまだ生きているように感じたからです。お別れの時の顔が少しほほえんでいるような優しい顔にしてくれた納棺師の方に感謝の気持ちでいっぱいです。
二人目はお尚さんです。葬儀の時の説法がとても私の心に響きました。
亡くなった人に一番大切なのはその人のことをいつまでも忘れないでいてあげること。それが一番の供養になると教えてくれました。お尚さんのやわらかい話し方が心にしみて、祖父のことをいつまでも大切に思い続けようと思いました。
それから家族みんなで祖父の思い出話をよくしています。私は仏壇に手を合わせて、いい事があると報告したり、誕生日には祖父の好きだったプリンをお供えしたりしていると祖父とつながっている気持ちになります。
人は生まれた時から最後の死にむかって生きています。私もこれからの長い人生を精一杯、前向きに充実した日々を送り、いい人生だったなぁと思いたいです。
「じいじ、私頑張るから天国からみていてね。素敵な女性になるからね。」