特別賞
「子どもの笑顔があふれる社会に」

知多市立東部中学校 3年

藤田 凌平

「もう着れなくなった服はない?」
季節の変わり目に、ぼくがいつも母から言われる言葉だ。もちろん、タンスの引き出しやクローゼットを整理するという意味だが、同時に施設に古着を送る準備をする、という意味でもある。ぼくは、母にそう言われると、せっせと服や靴の仕分けを始める。

ぼくや妹の小さい頃の服やおもちゃなどは、クローゼットの衣装ケースの中に、大きさ別にわけて、大切にしまってあった。だいぶ親せきや友達にあげたそうだが、それでもまだかなり残っていた。成長した今では、それらは小さくてかわいくて、母が捨てられなかった気持ちが何となくわかった。

母は職場で、ボランティア活動をしている人に出会い、その人が子ども服の古着を集めていることを知り、協力することにしたそうだ。そこで衝撃的な話を聞いたことが、ぼくも少しでも協力できれば、と思ったきっかけだった。

ぼくが住んでいる所から車で二十分くらいの距離に、児童養護施設があるそうだ。そこには常時、施設に満員の子どもがいるという。入所している子ども達は、親からの虐待、ネグレクトにより、保護されているという。

ぼくは近くにそんな施設があることに驚いた。そして、新聞やテレビだけの出来事と思っていた児童虐待が、身近な問題だったことがショックだった。ぼくと同じくらいの子どもに、古着だけど、ぼくができる範囲で力を届けたいと思った。それは、一人に使える予算がほとんどない、と聞いたからだ。

ぼくは、友達と遊びに行く時は、両親、時には祖父母からおこづかいをもらう。学用品は当然のように買ってもらい、野球部で使う道具も、かっこいいバットやエナメルバッグを見ると欲しくなり、しつこく両親に頼んでみることもある。

ぼくの行動は普通で、ありがちな中学生の姿だと思っていた。しかし、ぼくは恵まれているのだ。両親、祖父母、兄弟姉妹に愛され、常に関心を持たれ、毎日が何事もなく過ぎていく平和な日々。それはぼくが幸せだから気づかなかったことなのだ。

ぼくの身近な所に児童養護施設があることを知り、支援に協力したいと思った。しかし不幸な子どもを減らすための対策を今以上にもっとしなければならないと思う。ぼく達が周りの人々のことに、常に関心を持ち、知らん顔をしないことが大切なのではないか。他人のことも、自分や自分の家族のことのように思いやり、気にかける世の中にしていくことが必要なのではないか。

面倒なことには関わりたくない気持ちも、当然あると思うが、一歩踏み出す大きな勇気を持てるようになるといい。不幸な子どもが現れないように、社会全体で見守り、育てていかなくてはならないと思う。今は古着でしか協力できていないけれど、ぼくも子どもたちを支える力を持てるよう努力したい。