日本福祉大学生涯学習センター長賞
「お初盆」

南知多町立日間賀中学校 2年

齋藤 佑樹

「お土地柄」が一番表れるといえば、やはり冠婚葬祭の時であろうか。私はこの夏、その一部分に触れる機会に恵まれた。

私の大好きな龍おじさんの家が、初盆を迎えた。「初盆」というのは、この土地の呼び方で、正しくは「新盆」と呼ぶそうだ。「この土地」というのは、私の住む南知多町日間賀島のことである。名古屋出身の母は、「ここの風習は、一般常識の本に当てはまらない」とよく嘆いているが、なるほど、確かにそうだ。

八月に入ると、縁のある人が、初盆を迎えた家にお供物や金包みを持って行く。お供物は提灯ではなく、お米やお菓子など、貰う側の役に立つ物で、中には、栄養ドリンクなんて物もある。金包みの表書きも「御仏前」ではなく、「御初盆」だ。うちの母は「どうせ龍ちゃん達が食べるなら」と、北海道で買った上等なガレットを持って行った。私は「一枚百五十円もするのに・・・」と思ったが、日頃からお世話になっている龍おじさんなら、OKだ。

お盆を迎えた十三日の昼前に、龍おじさんから「お昼御飯、刺し身と天ぷらと煮魚しかないけど、三人揃って食べにおいで」と、電話があった。母は「おかずの差し入れ持っていくからね。ビールはあるの?」と返事をしていた。母が早朝からキッチンでバタバタしていたのは、この為だったのだ。龍おじさんは、一昨年奥さんを亡くしている。従兄弟である母は、他の親戚から頼まれていることもあり、何かと手伝いをしてきた。串カツ、唐揚げ、ステーキ、枝豆にポテトサラダ。私と父も手伝って、差し入れを龍おじさんの家へ運んだ。

家に着くと、他の親戚も集まっていた。まだ煮魚が出来ていないのに、母の作った差し入れをつまみに、早速ビールの栓が抜かれた。初盆を迎えたのが、八十を過ぎた龍おじさんのお母さんということもあり、まるで宴会の様な賑やかさだ。次々と空ビンが並び、龍おじさんが用意した刺し身や揚げ物も、母の差し入れも、瞬く間になくなった。

食後に皆でお墓参りに行った。赤い顔をしている人もいて、まるで酔い覚ましの散歩の様だった。私も親戚のリッ君を肩車し、すっかり兄貴気取りだった。お墓に着くと提灯に火を灯し、ろうそくのあかりが消えるまで、皆と雑談して過ごした。このお墓参りは、お盆の三日間毎日続いた。

私は、ふと思った。亡くなった人の霊を迎える初盆が、こんなに楽しくて良いのだろうか。食事の間も、お墓参りの時も、皆が笑顔だった。そんな私の疑問に父はこう言った。それが、天寿を全うした人を迎えるお盆だ。普段なかなか揃わない親戚が、その人を介して集まり、時間を共に過ごす。それが楽しければそれだけその人の供養になる。親戚の和。人と人との和。私は一般常識に当てはまらない、この島の風習を大切にしたいと思った。