特別賞
「園児達に学んだこと」

半田市立青山中学校 2年

辻 裕介

僕達のクラスで教育実習を終えた教育実習生の先生は言った。「本当にみんなからたくさんのことを学べた。」と。真剣にそう話してくれた先生の言葉を疑いたくはなかった。しかしその時の僕にはどうしてもその言葉が信じられなかった。なぜなら、自分より歳が小さい人達に学ぶことなど本当にあるのだろうか、そう思ったからだった。なにより先生の方がずいぶんと長く生きているのだから、僕達が知っていることなんかよりずっと多くのことを経験して知っている。そんなはずは、ないだろうとそう感じていた。

しかしこの夏、僕の考え方が大きく変わった出来事が起きた。二年生の行事でもある職場体験だ。体験先の保育園には「お遊戯」「手遊び」「紙芝居」を通して園児達に一生懸命接する先生達と、それらに答えるように時に喜び、怒り、笑い、一日を過ごす園児達がいた。そして、園児達とともに過ごしていると、少しずつ自分の心が温かくなっていくのを感じた。これはもちろん、周りにいる園児達の心の温かさがあってのことだと思う。僕が、籠のテープの張り替えの仕事を頼まれた時もそうだった。「何やってるのそれ」「私も手伝う」と、園児達は進んで仕事を手伝ってくれたのだ。「面倒な仕事なんてやりたくない」そんな考えなど一切ないことは園児の目を見れば分かった。逆に、「面白そう」という好奇心や「皆でお兄さんを手伝ってあげよう」という思いやりまで感じられたのだ。そんな優しい園児達を見ながら僕はふと、最近の自分を振り返る。「ここで、この人を手伝ったら良い人ぶってるように思われるかもしれない」そう思って手伝うことをためらったことはなかっただろうか、と。手伝いたいから手伝う。助けてあげたいから、力になりたいから手伝う。ただそれだけのことなのに・・・。そんな単純明快なことなのに、なぜ僕は相手のことではなく、その場の状況や自分のことばかり考えていたのだろうか。僕は自分を恥ずかしく思ったのと同時に、手伝うということの本質を思い出させてくれたのが園児達ということに驚いた。それだけではない、先生のいいつけを守ること、友達と思い切り遊ぶ楽しさなど忘れかけてしまっていた大切なことを思い出させてくれた。

僕は職場体験を通して、歳を重ねていくうちに忘れかけてしまっていた大切なことを園児達から学ぶことができた。だからきっと、あの時の教育実習生の先生にも僕が園児達から学んだことのように僕達から学べることが何かあったのだろう。今ならそう思える。

これから先、僕はもっと歳を重ねて大きく成長していくのだろう。そして多くのことを知り、忘れていく・・・。だから決して、今自分が考え、感じていることが正しいと決めつけずに、また進み続けることに疲れてしまった時には足を休ませ、物事の本質に目を向けて本当に大切にするべきことは何だったのか、思い出して生活していけたらいいなと思う。