特別賞
「伝えたい“思い”」

半田市立半田中学校 3年

江頭 美月えがしら みつき

「初孫は 美月と名付く 良き夜かな」
この俳句は祖父が私が産まれた時に詠んでくれたものです。

私の祖父は俳句を詠むことが好きでした。日々の日常生活や旅行での出来事などを俳句にし、文集を出したりもしていました。また、大学で理科の先生をしていたこともあり山登りが趣味でした。祖父の住んでいた九州には山がたくさんあるので週に一度は山に登り、草花を観察したり、健康維持のために頂上まで杖を使わずに歩いたりもしていました。

そんな元気だった祖父ですが、去年肺がんで亡くなりました。人一倍健康には気をつけ、体の弱い祖母を支えてきた人だったので急なことに皆が驚いたと言います。九州までは遠くなかなか会えないので私が元気な祖父に最後に会ったのは亡くなる半年前のお正月でした。私達家族は毎年お正月に九州の祖父母の家に行き、神社でお参りをし、その後山に登ることが恒例になっていました。家族みんなでおせちを食べ、楽しい時間を過ごす一月一日がこれからもずっと続くものだと私は思っていました。でも、現実はそんなに甘くありません。始まりがあれば終わりがあるのと同じように出会いがあれば別れがある。そんなあたり前なことを私は本当の意味で理解することができていませんでした。

災害が多発している昨今、一年前の私と同じ心境の人が多いのではないでしょうか。平穏な日常を奪った大阪での地震や西日本豪雨、猛暑などの災害。それらは、一瞬にして人々の人生を狂わせました。伝えたい思いを伝えられなかった人、やり残したことがある人などいろんな思いを抱えて亡くなった人がたくさんいると思います。でも、その“思い”は今となってはわかりません。そのことを身に染みて私が感じた本が一冊あります。その本は東日本大震災で起きた実際の話で、子供を地震で亡くした家族が作ったものです。その中で私が特に衝撃を受けたのは、ある母親の話でした。

当時小学校六年生だった娘はとても元気で明るい性格でした。一人っ子だったということもあり、よくいろんな相談をするほど仲が良かったそうです。しかし、震災の前日にささいなことで喧嘩をし、三月十一日の朝は「いってらっしゃい」と送り出すことができませんでした。母親は伝えたい思いを伝えられず今でも悲しんでいるそうです。この本を読んで私ははっとしました。私も祖父に伝えたかった思いがあるからです。それは「感謝」の気持ちです。「今までありがとう」という一言を直接伝えることができませんでした。だから、私は普段から自分の気持ちを人に伝えるようにしようと思いました。大切な人だからこそ伝えたい思いがあります。私に笑顔をくれる友達、いつもそばで見守ってくれる家族、天国にいる祖父に「ありがとう」と大きな声で伝えたいです。