特別賞
「私たちの自慢の畑」

半田市立半田中学校 3年

高浪 愛子たかなみ あいこ

今年の夏は、祖母の作ったおいしい野菜が食卓に並んでいない。

私の家の隣には、祖母が住んでいる。家と家の間に祖母の自慢の畑がある。そこで毎年夏野菜を作っている。しかし今年の畑には私達が育てた自慢の夏野菜は実っていない。

夏の初めに祖母になぜ今年は野菜を作らなかったのか聞いてみた。「畑を一年休ませると次の年はとてもおいしい野菜が収穫できるから、今年はやめたのよ。」と言って少し寂しそうな顔をした。それを見て私は思い出した。

いつも学校から帰ってくると祖母は畑にいて、野菜を収穫していた。私はその収穫したての野菜が大好きで毎日学校から帰ってくることを楽しみにしていた。

小学生のころは野菜作りを手伝っていた。しかし中学に入ってからはそのお手伝いをする時間が持てなかった。特に今年は、受験生で塾や習い事がとても忙しく、また暑い日が続いていたのですぐに家に飛び込んでいた。毎年の祖母との楽しい時間を忘れてしまっていた。

祖母の作るトマトは甘くてみずみずしい。茄子は紫色が美しく光沢がある。キュウリはチクチクしていて食べるとしゃきしゃきとしている。ピーマンは緑が濃く、苦みが少ないので苦手な私でも食べやすい。オクラは柔らかく弾力がある。

祖母が今年野菜を作らない本当の理由は、野菜を作るのはとても大変で、一人ではもう作る体力がないからだと思う。

野菜を作るには、まず草取りだ。次に土をアルカリ性にするために石灰をまき、耕し、溝を作り、元肥を入れ、うねを作り、草が生えないように黒いビニールをかけ、やっと最後に苗を植えることができる。そのあとも、毎日水やりを欠かさず、つるが出る野菜は支柱を立て、脇芽を採り…。

このようにたくさんの手間をかけなければおいしい野菜は育たない。高齢な祖母が一人で育てるのは大変だ。

祖母は「今年一年だけ畑をやるのを休む。」と言っているが誰も手伝わなければ、「もう一年、もう一年。」と言って野菜を育てることはなくなるかもしれない。だから私は「来年は受験も終わるから私が畑を手伝うね。」と祖母に伝えた。祖母はとても嬉しそうに「うん!楽しみにしているわ。」と言い、二人で笑顔になった。

プランターで育てる野菜もいいけれど、私はやはり大地で育てた野菜が好きだ。というより祖母と一緒に作った野菜が一番好きだ。

都会では畑が少なく、家の畑で野菜を作る経験ができる人はそれほど多くはないと思う。だから私のように大地で野菜を育てられることはとても幸せだ。今年はスーパーで夏野菜を購入している。とてもおいしく頂いているが、でもやはり自分達の手で育てた採れたての野菜は最高だ。来年は、また私達の自慢の新鮮でおいしい野菜が食卓を彩ることだろう。