特別賞
「私の祖母」

大府市立大府中学校 3年

髙瀬 琳香たかせ りんか

私の祖母は高校中退。初めて聞いたときは正直、とても驚いた。大きな病院に勤めていたことも知っていたし、小さい頃に見た、てきぱきと仕事を進める白衣を着た祖母の姿はとてもかっこよかったことを覚えている。いつも家族のことを気にかけて、みんなのためにと動く笑顔の絶えない自慢の祖母だったのに。私が中学生になった頃から、祖母は少しずつ自分の幼少期について話してくれるようになった。

祖母は七十六才。大分で生まれ、弟と妹がいた。時代もあったと思うが、とても貧しい少女時代を過ごしたらしい。靴の裏に穴があいても新しい靴はおろか、教科書すら買ってもらえなかった。それどころか、中学生の頃から近所の家のお手伝いなどをして働いていた。中学を出て、夜間学校に通わせてもらう約束で、病院に住み込んで働き始めた。けれど、忙し過ぎて結局は中退してしまったのだった。
「同情してほしいわけじゃないの。琳香は幸せな子だってことを知ってほしいの。」

祖母は自分の話をすることで両親に感謝できる子に育ってほしいのだと教えてくれた。 私は、小さい頃から習い事が大好きで、公文や習字など、いろいろと通わせてもらった。中でも、ピアノや英会話は大好きで、今でもずっと続けている。吹奏楽部に入ってクラリネットを吹きたいと言ったときも、一生懸命に続けられるならとすぐに通わせてもらえた。高価なクラリネットも祖父母がプレゼントしてくれた。
「ばあばは琳香に甘いんだから。」
という母に、
「琳香に使うのは生きたお金だからもったいなくないの。」
と笑いながら答える祖母。素敵なマンションに住んでいて、海外旅行もする祖母。いつも美味しいお肉をごちそうしてくれたり、洋服を買ってくれたりする。話し方もなんとなく品があって、昔からお嬢様なのだろうと勝手に感じていた。祖母が貧しく苦労してきたことなど、思いもしなかった。
「ばあばはたくさん苦労もしてきたけれど、一生懸命働いて、人に後ろ指を指されないようにと頑張ってきたおかげで今の生活があるのよ。」

笑いながら話す祖母は、やっぱり私の自慢の祖母だ。私は祖母にとって、自慢の孫だと思ってもらえているのだろうか。私も自分の理想とする人になれるように強く生きていきたい。