特別賞
「あたたかいつながり」

阿久比町立草木小学校 6年

厚喜 裕斗

五月のある日、
「不審者から学校に電話がありました。今から、通学団で帰ります。」
と、校内放送が流れた。ぼくは、新聞やテレビで、目にしている事が、実際に自分達に起きてしまった事に、とてもショックだった。信じられない。これは、いつも校内で行われる不審者対策なんだと思いたかった。クラスには、いつもの笑顔はなかった。先生も、ぼく達も、きん張していた。ぼくは、班長なので先頭を歩いた。いつもの帰り道、その日は、長い道に思えた。特に、曲り角には注意した。下級生をこんなに気にして歩いたのは初めてだった。家に着いたら、ほっとした。その日は、友達と公園で野球をする約束をしていたが、先生から、
「今日は外へ出てはいけません。」
と、言われていたので、家にいた。せっかく遊べる日だったのに、とても残念だった。近所のおじいさんが
「今日は何かあったのかね。子供が、だれ一人歩いておらんし、遊び声が聞こえない。どうしたんだねえ。」
と家にまで聞きに来た。パトカーや役場の車が、学区を回ってくれていた事も、いつもとはちがう状態だった。

次の日から、ぼくも妹も、防犯ブザー・防犯ホイッスルを身に付けるようになった。前から、防犯ホイッスルは、持っていたが、こんなに必要だとは感じてはいなかった。学校の門も、三年生のころから、りっぱなかぎのかけられる門になっている。この夏休みには、ボタンをおすと、職員室に異常を知らせるそう置がついた。学校にいる時間ぼく達は、守られている。下校時間にあわせて、デンソーの人達が、歩いてパトロールをしてくれる。とても心強く、安心して下校ができる。ぼく達を、地域の人達も見守っていてくれる。あの日、きん張して下校した、いやな思いは少しうすれてきた。

この事件で、人と人とのつながりを強く感じた。国語の授業で学習した事が、現実となった。その授業は、生き物はつながりの中にという単元で、生命について学習した。人は、長い長い生命の歴史があったから生まれた。両親がいるからぼくがいる。ぼく達ひとりひとりは、たった一つのかけがえのない存在だ。自分を大切にすることは、他を大切にする事と同じことだと強く感じた。これからも、人と人とのつながりを大切に、自分を大切に、他を大切にしていきたい。また、ぼく達につながるあたたかい心にいつも感謝している。 「ぼく達を見守ってくれて、ありがとう。」