特別賞
「『命』を大切にしよう」

半田市立乙川中学校 2年

伊藤 祥子

私が、まだ生まれていない一九八五年八月十二日に日航機墜落事故という大きな出来事があったそうです。今年でちょうど二十年目ということで放送された特別番組をテレビで観ました。

この飛行機は、東京発大阪行きで乗客五二四名。このうち助かったのはたった四人で、五二十人の尊い命が失われたそうです。放送されたのは主に美谷島健君(当時九才)のことでした。健君は野球が大好きで、高校野球を観に行くのに一人でこの飛行機に乗って事故にあったそうです。健君のお母さんは
「飛行機が墜落したとき一人でどんなに恐かっただろう。一人でなんて乗せるんじゃなかった。」
と、ずっと悔やんだそうです。

この放送を観終えた後、祖母が
「おばあちゃんも四六年前に、健君のお母さんと同じ悲しみを味わっているんだよ。」
と言って、話してくれました。祖母は昭和三五年九月二六日にこの地方を襲った伊勢湾台風で長男を亡くしたのです。当時は祖父母と亡くなったおじ(当時七才)と私の父(当時三才)の四人暮らしでした。その夜、雨風がひどくなったと思ったら、あっという間に家の中に水が入ってきて家族全員が流されてしまいました。おじは、そのまま行方が分からず、次の日に祖父が捜したところ遺体で見つかったそうです。父は祖母の足につかまり助かりました。祖母はずっと
「私が守ってやれなかった。」
と、悔やんだそうです。
「出来ることなら私が代わってやりたかった。」とも思ったそうです。だから、健君のお母さんの悲しみや後悔が祖母には自分のことのように感じられたのでしょう。

祖母はいつも『命は大切に』と口癖のように言います。また、おじより小さかったのに奇跡的に助かった父は
「兄貴の分まで長生きをしなくては。」
と、よく言っています。

世の中には、地震や事故、自然災害などで健君のお母さんや祖母のように辛い思いをしている人がたくさんいます。それなのに、最近では自殺や殺人を簡単に犯す人が多すぎると思います。一つの命が消えることで、どれだけの人が悲しむのかをよく考えなければいけません。世の中には死にたくないのに死んでしまう人がたくさんいるのです。一人一人が命の大切さを考えるべきです。
健君が生前
「世界で一番大切なものは命だよね。」
と言っていたこの言葉を、私も心に焼きつけ命を大切にしていきたいと思います。