特別賞
「海のある原風景」

知多市立東部中学校3年

安北やすきた ゆう

 心が落ち着く風景と出会ったことはあるだろうか。

 保育園に通っている頃から、自分が海が好きだということに気づいていた。今も、思い出の景色や好きな景色を聞かれると、真っ先に私の頭をいっぱいにするのは、海の見える新舞子の景色だ。

 小さい時から家族でピクニックによく行く新舞子の海では、色々な人を見かける。砂浜で遊んでいる人や、ランニングをしている人、ビーチバレーをしている人、犬の散歩をしている人、時には部活動の特訓のような風景も見たことがある。そんな人たちを見ながら、家族で松の木陰にシートを敷いて、お弁当やお菓子を食べたり寝転がったりした。時間が経つと次第に木陰が移動するので、シートも動かして、また寝転ぶ。寝転んだ視線の先に、ウィンドサーフィンの帆が横切っていく。様々な目的で利用されている新舞子の海を見ると、私はその人たちも含めてこの景色が好きなのだと改めて実感し、心が落ち着く。

 何より、海の景色からは自由を感じることができる。どれだけ遠くを見ても、最後が見えない海を目の前にすると、自分の悩みや不安が小さいものに思えてきて、少し楽になる。

 象徴的な、大きな白い風力発電のプロペラの影が回る芝生に、寝転がって空を眺めていると、ふと、これが私の原風景になるんだろうなと思う。

 そんな風にこの海を心が落ち着く場所だと思っている人が、ここにいる人の中にもいるに違いない。

 本当は自分だけの大切な原風景を内緒にしておきたいけれど、一方で、この新舞子の海の心地良さを、もっとたくさんの人に知って欲しいし、味わって欲しい。

 コロナ禍以前は、今よりも少しだけ程よく整備された芝生と、飲食ができるスペースがあったように思う。少しずつまた整備が進み、一年中みんなが集う場所として賑わえばいいなと思う。そうしたら、私と同じように、生涯の原風景になり、何かあった時に、戻るべき、心落ち着く場所になるに違いない。

 家族写真のフォルダーを見返していると、まだ私が母のお腹にいる時に両親が二人で新舞子の海を訪れている写真を見つけた。母が大きなお腹で、芝生に座って白つめ草の花冠を作っている写真だ。それを見て、私だけではなく、ここには訪れる人の数だけ思い出があって、親子や孫にも受け継がれて行くような、心落ち着く風景なんだなと思った。

 海がある土地に生まれ育ってよかった。これからも、何度も何度も行ってたくさんの思い出をつくりたい。